常石造船、環境への挑戦を具現化
広島県福山市に本社を持つ常石造船株式会社は、5月13日に新たな造船技術の一環として、世界初のメタノール・重油の二元燃料を使用したばら積み貨物船「TESS66 AEROLINE」の引渡しを行いました。この画期的な船は、環境への配慮を背景にした持続可能な造船業の新たな一歩を象徴しています。
環境負荷を大幅に軽減
TESS66は、主にばら積み貨物を運ぶために設計された船舶で、最大6万5,700トンの貨物を積載可能です。この新型船は、メタノールを燃料として採用することで、重油と比べて窒素酸化物(NOx)の排出を最大80%、硫黄酸化物(SOx)を最大99%、さらに二酸化炭素(CO2)を最大10%削減することが可能です。これにより、海洋運輸における環境への影響を大幅に軽減することが期待されています。
また、TESS66は、グリーンメタノールを使用することによりカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも進めています。グリーンメタノールは、再生可能エネルギーからの水素と回収されたCO2から合成されたものであり、持続可能な社会への貢献が見込まれています。
高い設計性能と技術革新
さらに、TESS66はそのデザインにおいても素晴らしい特長を備えています。船尾甲板上に設けられた大容量のメタノール燃料タンクは、荷役の安全性と効率を高めつつ、約81,500㎥の貨物艙容量と65,700MTの載貨重量を備えています。これにより、通常の運航を維持しながらも高い積載性能を確保しています。
燃費効率に関しても、優れた主機を選定し、独自技術「AEROLINE」により風圧抵抗を低減することで、高性能を発揮します。このシステムは、航行時のコスト削減にも寄与し、経済的な運営を実現します。
常石造船の未来へのビジョン
引渡しの瞬間に、常石造船の代表取締役社長執行役員である奥村幸生氏は、「この挑戦を支えてくれたお客様や関係者、弊社従業員一人ひとりに感謝の意を示したい。この船は我々の未来を象徴するものであり、環境に配慮した革新技術を具現化したものです。」とコメントしました。彼は、今後も造船業界のさらなる脱炭素化を推進する企業であり続けると誓いました。
全国および海外での取り組み
常石造船は、国内の福山市だけでなく、フィリピンや中国にも工場を展開しており、さらなるメタノール燃料船の建造を進めています。グローバルな視点から、持続可能な輸送手段の提供が強化されるでしょう。
この引渡しは、持続可能な社会の構築へ向けた第一歩であり、常石造船はその先駆者としての役割を果たしていくことが期待されています。今後、この革新的な取り組みがどのように進展していくのか、目が離せません。