くら寿司が業界の課題に立ち向かう新たな研修プログラムの実施

くら寿司、業界の人手不足問題を解決するための新たな研修方法を展開

近年、日本の外食産業は深刻な人手不足に直面しています。特に2010年代に入ってから、団塊世代の退職により労働力が減少し、少子高齢化が進む中で、求職者に対する求人数が大幅に増加しています。このような状況を受けて、くら寿司では従業員体験（EX）を高めるための新たな研修プログラムを導入し始めました。

体験型研修の重要性

日本経済新聞社がまとめた2024年度の飲食業調査によると、外食業界の企業の25.4%が国内出店の計画を見直していることが分かります。また、厚生労働省の調査では飲食業の有効求人倍率が全業種を大きく上回っており、外食業は超売り手市場となっていることが伺えます。これは、求職者が企業を選びやすくなっていることを意味します。

この厳しい現状を打破するためには、現在働いている人、またこれから働こうとしている人にとって魅力的な職場環境を整備することが急務です。くら寿司では、モチベーション向上や深い学びを促進するような体験型研修に力を入れています。

くら寿司の革新的な取り組み

くら寿司では、自社の理念を反映したさまざまな研修プログラムを実施しています。例えば、農業や漁業の現場での体験を通して、食の安全や環境意識を育むことを目的とした研修があります。実際に田植えや稲刈りの体験を行い、食の生産過程を学ぶことで、従業員は食材の大切さを再認識し、職務に対する誇りを育むことができます。

さらに、接客や調理技術の頂点を決定する「KURA-No. 1 GRAND PRIX」コンテストも開催されており、従業員同士が励まし合いながらスキルを向上させる環境が整っています。このような取り組みが、従業員のエンゲージメント向上に寄与しているのです。

体験の共有がもたらす影響

採用に関する専門家である谷出正直氏によると、人手不足の問題を解決するためには、企業が求職者から選ばれる存在になることが重要です。そのためには、社内の文化や価値観を共有し、社員が「ここで働きたい」と思えるような環境を整える必要があります。くら寿司が行っているような体験型研修は、まさにその一環として機能しています。

研修が単なる義務ではなく、自身の成長につながると認識してもらうためにも、「なぜこの研修が必要なのか」をしっかりと伝えることが大切です。企業理念やビジョンを理解することが、モチベーションの向上につながります。

EXを向上させる新たなステージへ

くら寿司では、2025年に「KURA-No. 1 GRAND PRIX」の世界大会を開催予定で、アメリカや台湾からも参加者を募っています。このようなイベントは、スタッフの技術向上だけでなく、企業のイメージ向上や顧客サービスの質の向上にもつながります。

全社的に同じ方向を向いて取り組むことで、業界全体の人手不足問題を解決する手助けに繋がるかもしれません。くら寿司の体験型研修プログラムが、業界の新しいスタンダードとなることが期待されています。