チェルノブイリ支援の軌跡
2025-07-30 09:49:28

NUKEMが語るチェルノブイリ原発事故後の国際支援と未来への道

NUKEMが語るチェルノブイリ原発事故後の国際支援と未来への道



2024年、ドイツのNUKEM Technologies Engineering Services GmbH(以下NUKEM)は、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故以降の取り組みと、自社が関与してきた廃止措置・放射性廃棄物管理プロジェクトの成果を改めて発表しました。これにより国際支援の一環としての自身の役割を再認識するとともに、未来への道筋を示すことを目的としています。

1980年代の原子力と事故の衝撃


原子力発電の普及が進んだ1980年代、数多くの国で原発が建設されましたが、1986年4月26日、旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原発にて、かつてない規模の事故が発生しました。この事故によって、RBMK型原子炉の設計に潜む欠陥や人的エラーの危険性が浮き彫りとなり、大量の放射性物質がヨーロッパ全域に拡散しました。それにより、ドイツ国内でも放射性降下物が確認され、国際原子力政策や安全基準の見直しが急がれることとなりました。

NUKEMの使命とTACISプログラムの成功


チェルノブイリ事故直後、EUはTACISプログラムを立ち上げ、NUKEMはこのプログラムの一環としてウクライナ国内での放射性廃棄物処理に向けた「ICSRM(Industrial Complex for Solid Radioactive Waste Management)」プロジェクトを担当しました。このプロジェクトは、次の4つの主要施設で構成されました。

1. Lot 0:中・高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設(3,500㎥の容量)
2. Lot 1:既存廃棄物貯蔵庫からの廃棄物を安全に回収するシステム(1日3㎥の処理能力)
3. Lot 2:廃棄物を焼却・圧縮・固化処理する自動化ライン
4. Lot 3:短寿命の放射性廃棄物向けの浅地中最終処分施設(容量55,000㎥、設計寿命300年)

NUKEMはこのプロジェクトにおいて、設計・施工管理・調達を全面的に担当しました。2024年より施設が本格稼働し、ウクライナにおける廃棄物管理インフラが国際的安全基準に基づいて構築されることで、放射性廃棄物の安全な長期処理が実現される予定です。

技術力と国際社会との連携


NUKEMのエグゼクティブオフィサー兼プレジデントのトーマス・ザイポルト氏は、「チェルノブイリ事故の影響を克服するために、我々の技術と経験を活かすことが国際的な責務です」と述べ、NUKEMが築いてきた技術力の重要性を強調しました。一方、エグゼクティブオフィサー兼マネージングディレクターの二宮暢昭氏は、「廃止措置や廃棄物管理は、過去を清算するだけでなく、未来の世代への責任でもあります。NUKEMは持続可能な原子力エネルギーの利用を支えていくため、今後も責任を持った取り組みを続けていきます」と語りました。

NUKEMの概要


NUKEM Technologies Engineering Services GmbHは、1960年に設立され、60年以上にわたって放射性廃棄物や使用済み燃料の管理、原子力施設の解体・廃止措置に関わる最先端の技術とソリューションを提供しています。この経験を基に、NUKEMは全世界の原子力関連プロジェクトに貢献し、安全かつ効率的な廃棄物管理を実現しています。また、同社は株式会社ムロオシステムズの100%子会社であり、グローバルな視点で原子力産業の安全と発展に寄与しています。

結びに


NUKEMの取り組みは、単なる技術の提供にとどまらず、国際的なパートナーシップを介して未来の持続可能なエネルギー利用に向けた道を切り拓いています。チェルノブイリ事故を教訓としたこれらのプロジェクトは、今後の安全な環境を次世代へ継承するための重要なステップとなるでしょう。


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